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2007年10月11日
”しつこい”リーダー
新規事業を推進するリーダーや起業家のリーダー特性を語る際に、多くは第一に”情熱”や”ビジョン”が大事などと言われます。もちろん、そこに何の異論も私はありません。しかし、通り一遍等の切り口でリーダー像を考えてみても面白くありませんので、少し別の角度から「新規事業に強いリーダー像」というものを考えてみたいと思います。ただ、社内で新規事業を推進するリーダーと起業家は少し分けて考える必要があるでしょう。なぜなら、社内新規事業の場合は、決済や会社のしがらみなどで各種調整事項や根回しなどがそこに発生します。また、それに対して起業の場合は、100%意思決定を自分自身で行い、コントロールすることが可能だからです。ベースは同じですが、多少状況が変わるという部分で、リーダーというものを考える際に、注意も必要だと思います。しかしながら、ここでは社内で新規事業を推進するリーダー像というものを考えてみたいと思います。
さて、新規事業に強いリーダーとはどのようなリーダーのことを言うのでしょうか。私は、「”しつこさ”を持つリーダー」であると定義づけています。言い換えれば、”粘り強さ”とも言えますが、ここではより強いニュアンスに感じる”しつこさ”と表現しておきましょう。私はコンサルタントとして、数々の事業計画に目を通す日々を過ごしていますが、計画だけではなく、それを推進するリーダーも詰めが甘く、”しつこさ”を感じないということが往々にしてあります。もちろん、アイデアレベルの事業計画は詰めが出来てなくて当然、また新規事業をはじめて立ち上げる方にとっては未知の経験ばかりですので、行動に多少の甘さが出るのも当然かもしれません。しかし、この”しつこさ”をどれほど持てるかによって新規事業の成否も変わってくるのです。では、この”しつこさ”というもの、どういう風に捉えればいいのでしょうか。私は、”しつこさ”の中にも大きく分けて2つの要素があると考えています。一つは「考える”しつこさ”」、二つ目は「実行する”しつこさ”」です。
まず、「考える”しつこさ”」。リーダーは、森も木も両方見れる眼をもっていなければなりません。そして事業を考える際は、「繰り返し考えること」と、「奥深く考えること」に”しつこく”ならなければダメだと思うのです。新規事業の企画とは仮説に過ぎません。そのため、検証してはまた新たに仮説を立てる。そして寝ても覚めても考え続けるだけの”しつこさ”から、ある日突然スムーズに物事が動き出す瞬間が生まれてきます。また、考えが浅く止まるリーダーも世の中には数多くいらっしゃいます。しかし、現場に落とし込んで実践し、ましてや競合との熾烈な競争の中で差別化していくためには、とことん深く考えなければいけないとも思います。私は、”頭から血が噴出すくらい”にといつもクライアントの前やセミナーでは表現させていただいてます。
考える”しつこさ”という部分では、現在、日経新聞の「私の履歴書」というコーナーで毎日連載されているイトーヨーカドーの鈴木会長がお手本になる存在だと思います。鈴木会長は、誰しもが知るセブンイレブンの日本での実質的創業者。ちょうど、前回あたりより連載でもセブンイレブンの創業前後の話が出てきていますので、とても興味がもてます。さて、鈴木会長のロジックを簡単にご説明申し上げましょう。POSデータだけでは、全く売れ筋動向や顧客心理はつかめないというのが鈴木会長のロジック。もちろん、温度が高いからお茶が売れる、アイスクリームが売れるといった表面上の数値だけでも、商売は読めないと考えます。
例えば同じ温度が高い日でも、湿度が低ければ意外に涼しく感じる日もあります。ここで、温度やPOSデータだけを鵜呑みにすると、商品構成を誤ってしまいます。そのため、繰り返し仮説を立てて、検証する。そして仮説を立てるときには、とことん深く考える。こんな”しつこさ”が、現在のセブンイレブンを作り上げてきたものだとさえ、私は思うのです。考える”しつこさ”は、頭でっかちになりがちと批判する人もいますが、少なくとも新規事業の成功確率を上げるためには、リーダーにとって大事な要素だと私は思いますよ。
そして、考えるだけではなく、「実行する”しつこさ”」。考えること以上に実行することの方が重要なのは、言うまでもありません。しかし、この”しつこさ”を実行面でもどれだけ持てるかが、新規事業の計画時においても、立ち上げ時においても重要な鍵を握ります。松下幸之助氏の逸話で有名なものがあります。とある講演会で聴衆から一つの質問を受けました。「事業を成功させる秘訣を教えてください」と。すると幸之助氏は、一言こう答えられました。「簡単なことや。成功するまでやり続けるだけのこっちゃ」と。質問した人は、納得がいってなかった様子ですが、後から考えると、とても含蓄のある言葉であることに気付き、衝撃を受けたと言います。なるほど、これは成功するまで実行し続ける”しつこさ”を説いているとも私は思います。やり続ける粘り力は、人によっては撤退の基準も考えずに、無鉄砲だと言う方もいらっしゃるでしょう。しかし、少なくとも撤退基準が明確なときでさえ、実行する”しつこさ”を持ったリーダーが推進した新規事業は、とっても足腰の強いものになるのではないでしょうか。
新規事業というと、目新しいものであるうえに、成功すれば多くの賞賛を得られるため、一見すると派手な仕事に見えます。しかし、実際に成功させようとすると、裏ではとてつもなく地道な作業が待っています。そして、この地道な作業をどれだけ積み重ねたかによって、新規事業の成否が変わってくるから本当に派手さなどとは無縁なものと言えることでしょう。しつこく、しつこく、ビジョンや目標を追いかけていく姿。そんなリーダーの姿に、他のスタッフも魅了され、結果として上手に統率できるようになっているのもの。最近、”部下がよく言うことを聞く方法”などというマニュアル本が書店へ行けば、たくさん置かれています。しかし、そんなもの読んでも全く意味がありません。なぜなら、人間はロボットではないため、テクニックごときでは動かないからです。むしろ、目に見える形で”しつこく”実行する姿、地道に業務を積み重ねていく姿でしか、部下は言うことを聞かないと私は思いますよ。
考える”しつこさ”と実行する”しつこさ”、これは新規事業に強いリーダーのあるべき姿である。私は少なくともそう思います。あれを言ったら嫌われそう、こうしたらどういうように思われるかな?、そんなことを気にする必要は全くありません。他人にどう思われてもいい。愚直に”しつこさ”を追求できるリーダーこそが、新規事業を成功に導く。私はコンサルティングを各社でしてきた経験上、そう思いますね。
投稿者 compas : 2007年10月11日 18:41
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