2007年12月28日

特定顧客という強み

強みを活用した新規事業を検討する。これはどんな企業にとっても至上命題なことですね。しかし、どんな強みを活用するのか、またどの強みを企画に活かすのかという部分は難しいことでもあります。そこで、まず初めに私のコンサルティングでは、とことん強みの棚卸作業をしてみるステージを作ります。それによって、実は新規事業の企画さえも、イメージしやすくなる効果も生じるからです。

数ある企業が持つ強みの中で、新規事業に活用しやすいもの。それを挙げるとすれば、私はまず「特定顧客とのパイプ」を挙げますね。特定顧客とのパイプさえあれば、その顧客が求めることを徹底的に掘り下げて検討し、提供する価値の選択肢を増やしていく作業を行ってみるとよいでしょう。俗にソリューションという言葉が使われたりもしますが、そんな言葉よりも中身が大事です。

さて、特定顧客とのパイプという最大の強みを活用して、新規事業の定石を踏む企業に「一休」という会社があります。多くの方はご存知だと思いますが、高級ホテルに特化して予約仲介をネット上で手がける企業ですね。今では一部上場企業にまでなりました。ニッチだと思っていた市場をメジャーにしていったわけです。

同社は現在、高級ホテルとの強いパイプを活かして、事業の水平展開を図っています。ホテルの部屋の予約の仲介で基盤を築いた後は、ホテル内レストランの予約仲介、そして次に有名ホテルが扱うオリジナルのグッズのネット通販などです。既にパイプを築き、事業基盤を持つ同社であれば、特定顧客とのパイプという最大の強みを活かした新規事業をどんどん展開していけるわけですね。

高級ホテルという特定顧客は、ブランド力がある上、単価が高い商売ですので、検討できる新規事業の領域も明確にすることができます。現在、宿泊予約関連での売上が9割を占める同社にあっては、成長路線を描ける次なる収益源の発掘が最大の課題事項であったわけです。しかし、特定顧客とのパイプから新規事業を発想すれば、たくさん企画が創出できるのではないでしょうか。

ついつい、新規事業というと、新規性のある企画ばかりに目が行きがちですが、まずは目の前に存在する顧客の声を徹底的に掘り下げてみるということが大事になります。特定顧客の声と、提供できる事業価値のバリエーションの検討。こんな身近なところから、企画作りをしてみてはいかがでしょうか?浮き足立てずに、企画を考えることは実はとっても重要なことなのです。

投稿者 compas : 11:37

2007年12月24日

制度と戦略の定石の両軸が大事

社内ベンチャー制度を設けて、社員から新規事業の企画を募る企業は大企業を中心に多く存在します。しかしながら、あまり成功している企業が多いとは決して言えない実情があるのは、残念なことです。それは組織上の問題や起業者の甘えなど精神的な問題、そしてスキルの問題など、社内ベンチャー特有の問題が存在していることに原因があるようです。

そんな中、いくつかの事業が軌道に乗り出し、上手に社内ベンチャーを運営されている松下電器のような会社も出てきました。松下電器は、「パナソニック・スピンアップ・ファンド」という名称でファンドを組成して「社内ベンチャー制度」を整備した本格派として、以前より私は注目していました。実は、この制度は同社においては創設から7年ほど経つようですが、試行錯誤の連続であったようです。

ただ、同社が他社の制度以上に、軌道に乗った企業が多く生まれる背景には、社内ベンチャー特有の甘えを許さなかったことと、個々の事業企画が、”強みを活かして特定顧客に食い込むニッチ戦略”を的確にとっていたからだと思われます。ちなみに、同制度と同ファンドは経営不振にあえぐ2000年に立ち上げましたので、当時の中村社長の英断だったと言っても過言ではありません。

まず、同制度は、ファンド設立後3年間で社内で挑戦できる風土をつくり、第二段階として会社として収益を出せるかどうかを目標にしたとのことです。事業企画の審査には社外のベンチャーキャピタルの幹部を招くほどの徹底ぶり。また、審査にかける前の事業計画のブラッシュアップには、外部のコンサルタント会社を導入してプチMBAのように、徹底した教育も施したと聞きます。

また、原則三年以内の営業黒字化と五年以内の累損解消を求められますので、社内ベンチャーだからという甘えが入り込む余地はないわけです。提案者には、1割以上の出資が求められ、9割ほどは松下本体が出資してくれるとは言え、特に技術系の企画になると、資金面でも常に緊張感が強いられる状態です。そんな中から、既に7年間で27社を創出し、営業黒字の会社が14社誕生したと言いますから、かなりインキュベーションに成功しているのではないでしょうか。

例えば、電子看板を手がける「ピーディーシー」は、成功企業としてもよく事例に取り上げられます。同社は、公共施設や大規模商業施設を主要顧客とし、薄型ディスプレーの設置からコンテンツ作成・配信までを行う事業で2006年度には、年商14億円、経常利益で2億円も稼ぎ出したといいます。もちろんディスプレーには松下のプラズマを用いていますので、親会社との連携も働かせていますね。

また、同社の強みはコンテンツの作成だけではなく、効果測定までするところに強みがありますので、今後が楽しみな企業でもあります。同社のように営業黒字の企業が増えてきたことにより、株式公開や他社への売却などイグジット(出口)も事務局では検討し始めたとのことのようです。

さて、社内ベンチャーでは成功事例がなかなか出にくいと言われてきましたが、松下電器の事例のように、「事業性の判断を厳しくした制度」と「強みを活かしてニッチを攻略する」という部分を徹底して、積み重ねれば充分成功モデルは築けるのではないかと思います。親会社が活かしきれない技術やアイデアを死蔵させないためにも、上手に社内ベンチャーを位置づけ、取り組まなければいけませんね。

投稿者 compas : 14:18

2007年12月17日

「社会性」が鍵!

最近、エコ(環境)を中心に、生活者の意識が社会性といったところに向いて来たような気がします。これだけ不祥事だらけの世相にあっては、社会性を追求している企業や事業が自然と指示を集めるようになる。こんな皮肉的な要素によっても、その動きが加速されているように私は見えます。今年は、「社会性」や「公益」といった言葉がキーワードとしてたくさん出てきました。やはり、この流れは本物なのでしょう。

成熟化社会の中で、満足感が得られることとは、地球市民として社会に良いことをしているという実感を持てること。こんな深層心理が「社会性」というものと紐ついているような気がしますね。終身雇用制度社会が崩壊してから実力主義という概念が浸透し、皆、自己実現に躍起になってきました。しかし、これは他人との競争の上での自己実現に傾いていました。ところが、最近になって、やっと他人との比較ではなく、「社会や環境にもいいことが、自分にも心地いい」というソフトな考え方に移行してきたようです。

さて、それではビジネスとして、どのように捉えていけばいいのでしょうか。まずは、時流の根底に流れるコンセプトから探っていきましょう。先日、日経MJ新聞に分かりやすい表現で記事がありましたので、引用したいと思います。「地球環境のために取りくみたい」、「ものの豊かさより心の豊かさが大事」、「義理や人情を大切にしたい」、「人のために役立ちたい」、「温かな家庭や社会をつくりたい」、「伝統や歴史のあるものに豊かさを感じる」といった価値観を具現化することです。

ところで、「社会性」と「ビジネス」とは両立しないもの、社会性のあるものでお金儲けはしてはいけない、こういう伝統的な考え方が一方では存在しますね。しかし、本当にそうなのでしょうか?そんなバーター的なものなのでしょうか?社会性の最たるものとして医者の存在がありますが、医者で金持ちはたくさんいますよね。いいことをして、結果としてお金が儲かる。そしてそれを社会に還元する。そういうサイクルで捉えるならば、社会性と利潤の追求は両立すると私は思います。従って、社会性を前面に出した新規事業もあり!というわけです。

少し前までは、景気が回復して以降、ニューリッチやワンランク上の消費を志向する人も多くいました。しかし、今では、”消費”ではなく、自分の得てきたお金や知識・技能を社会に”還元”するという点に、社会のトレンドが潜んでいるようです。また、プロの技術を活かした社会貢献やNPOやNGOへ転職する人が増加してきたことを見ても、大きく時代が変化してきていると言えます。実は、この生活者の意識の変化があったところに、新規事業の種が潜んでいるもの。そんなことに注意が必要でしょう。

さて、最後に「社会性」をどうビジネス的観点で捉えるのかを、前述した日経MJ新聞が平易に解説していますので、引用してみたいと思います。「消費はあくまでも洗練されており、文化的生活を享受しながら持続可能な活動をする。土臭さを喜ぶ昔ながらの社会派とは一線を画す。キーワードは”上質な普通”、”エコラグジュアリー”。ペットボトル飲料を買うより高機能な水筒を持ち歩く。無駄に大きくない小ぶりなクルマを買う。リサイクル品も歓迎。」こんなイメージの捉え方が適当なことでしょう。

さぁ、時流を捉えた後は、コンセプトを考え、具体的な新規事業開発や商品開発に落とし込んでみましょう。2008年は、ますますこの傾向が強まってくるのではないかと私は考えています。

投稿者 compas : 10:54

2007年12月12日

モノよりコトだけで本当にいいか!?

社会が成熟してから、モノを消費することよりもコト(事)消費する方が生活者は望むと言われてきました。もちろん、そういう側面はあります。しかし、これを新規事業開発で考えた場合には、多少の注意が必要です。今まで”モノ”ビジネスしかしてこなかったメーカーなどが、いきなり”コト”ビジネス”だけ”で新規事業を考えようとすると、少し無理が発生します。なぜなら、コトに関する充分な知見を持たなかったり、モノビジネスの発想で事業を捉えてしまうからです。

そのため、コトビジネスを新規事業において実施する場合でも、自社の基盤であったモノビジネスを排除して捉えるのはやめましょう。モノビジネスで培ってきた強みを充分に、コトビジネスでも活かす方法を考えることが一番適切だと言えます。例えば、「タニタ」という家庭用計測機器メーカーの健康事業に関する取り組みを読み解いて見ましょう。

同社は体脂肪計などをつくるメーカーですが、「健康管理支援事業」では「モノ+コト」の組み合わせで、事業開発を行っています。歩数計や体重計、または体脂肪計で自分の身体を計測して、結果をネット上でグラフ化したり、それをもとに専門家の食事指導やダイエット方法の情報提供などを受けることが出来る仕組みです。会員制で展開しており、入会金は2千円、月額料金は千二百円で利用が可能です。ネットで健康管理をして、専門家からも指導が受けられるというビジネスモデル。これ自身は決して珍しいものではありませんね。

しかし、同社がメーカーで一定のシェアを築いていることを考えると、モノという強みの上にコトの付加価値を加えていますので、同業他社に比べても競争力は維持できると考えられます。これがもし、健康管理サービスだけで物事を考えれば、この部分ではサービス系のベンチャー企業と比べて競争力が維持できたかどうかは分かりません。ちなみに、同社は例えば歩数計を使った場合、歩数に応じてポイントを付与して、ポイント提携先の企業の商品と交換できるなどの特典も付けることを発表しました。

こうしてタニタでは、個人会員の獲得を推進し、2009年度に45万人の会員を集め、年商50億円事業にしていく目標を打ち立てています。さて、メーカーの新規事業担当者の方は覚えておきましょう。「これからはモノづくりやモノの販売だけではダメだ!それ以外のサービス分野で事業企画を立てて欲しい」。こんな指令を経営幹部から受けることがよくあるでしょう。しかし、モノという強みを充分に活かし、モノという基盤に乗ったコトビジネスでなければ、新規事業も簡単には成功しませんよ。

時流を考えると、コトビジネスを研究することは大切です。しかしながら、こんな場合でも、モノの強みや基盤の上に成り立つ企画を考えましょう。コト消費に着目することは間違っていませんが、モノを排除して事業企画を考えることは、モノビジネスを行ってきた企業としては適切ではないと思います。自社の強み、世間でのブランドイメージなど、足腰部分を見つめなおしながらコトビジネスを検討していきましょう。

投稿者 compas : 10:56

2007年12月11日

別の場所で考えることが大切

新規事業の企画を考える際に、いいアイデアが出ないと嘆きながらも会議室や自分の机にとどまって考える仕事をするケースが多く見受けられます。ただ、私はこれでは全く良いアイデアも浮かばないばかりか、ブラッシュアップされるとは思いません。時には、考える場所を変えて企画業務に取り組むべきだと思うのです。やはり、場所を変えることで頭を切り替えるということは大事ですよ。強制的に、自分を現実の業務の場所から隔離してしまうことをお薦めします。

よく経営合宿という形式で、場所を変えて集中的に会社の全体戦略などを討議するケースが多く見受けられます。実は、これは、新規事業企画についても、もっとなされるべきだと思いますが、意外に出来てない会社が多いことには驚きます。新規事業とは将来の本業になるものですので、優先順位を上げて取り組んでいただきたいものです。まずは普段の会議室ではなく、違う場所に変えてみる。ここからスタートです。

先日読んだ日経産業新聞では、ネットサービス関連企業の間で新サービスを開発するための開発合宿を行うことが流行っているとの記事を読みました。普段の業務とは場所を変え、ホテルや民宿にて短期集中的にソフトウェアを書き上げるところまでを行うというもの。日常業務を忘れて開発に没頭でき、参加者が互いにアドバイスし合う事で開発効率を高めると言います。これは、技術の進化の早さやオープンソース化の流れの中で、技術よりもアイデアの鮮度が勝負の鍵を握ることに端を発しています。

実は、場所を変えて考えるという仕事は発想の転換につながるだけではなく、時間的な制約を向けた中でアイデアをひねり出す、いわば修行の場としても活用できますので、企画業務には有効な策なのです。良いアイデアは居酒屋で飲んでいるときや、カフェでお茶をしながら話をしている時に、突然ひらめいてくることが多くあるもの。これは普段とは環境を変えて、リラックスしたり、脳に刺激を与えるからこそ可能になってくる現象でもあります。

別の場所に行って、部署横断的に”わいがや”主義で企画を考えてみること。これは、とっても重要なことだと私自身は考えています。新規事業のネタは会議室からは生まれない。会議室は企画を評価したり、何かを組み立てる場、そして意思決定する場でいい。ただし、企画の原型は、非日常感あふれる中に身を置いて作っていくことを覚えておきましょう。実は、これが企画づくりには一番大事なことではないかと時々私は思うのです。

投稿者 compas : 15:21