2008年08月18日

新規事業は社内特区で行え!

先日読んだ日経ビジネス誌における「内田洋行」社の事例はとっても面白かったです。内田洋行といえば、オフィス家具やコンピュータ、教材などを専門に扱う商社として有名です。しかし、オフィス家具など一通りモノが行き渡れば、価格競争に陥る中で、新規事業開発に特化した「次世代ソリューション開発センター」を設けられました。実は、ここで特筆すべき事項は、この新規事業開発を担うのが、平均年齢28歳の若いメンバーのみとしていることです。

それもそのはず、ここに配属されているのは新入社員だけで、他の部署から年配社員の異動はさせず、管理職も入社2年目や30代半ばの人間のみとしているようです。更に、同社では”鎖国政策”を打ち出しました。次世代ソリューションメンバーに関しては、他の部署の社員との接触を禁じた上で、活動内容すら社内で公開せず、社員食堂の利用も不可という徹底振りが面白いのです。

もちろん、こうした動きは社内から批判が多く挙がったそうですが、経営陣はそんな声を一蹴。徹底的に社内における経済特区のように新規事業の重要性を社内外に知らしめたのでした。組織をいじったりする会社は多くあります。しかし、本当の意味で新規事業の位置づけや重要度を見直し、特別扱いできる企業は多くありません。なぜなら、利益がすぐに上がらない部署をなぜ優遇しなければならないのかという反発が必ず出るからです。

しかし、新規事業とは簡単に言えば「育てる事業」のことです。既存事業のように「稼ぐ事業」でもなければ、もちろん事業テーマによって新規事業のスピードが既存事業とは異なるわけです。そんな事業開発に対して既存事業とは同列では運営できないわけですから、私からすれば当たり前とも言えます。また、特に同社のセンターに関しては、ITの活用をテーマに掲げていますので、尚更のことではないかと思うのです。

私は、従来より、新規事業の位置づけを社内で明確にした上で、新規事業開発に携わるメンバーが思いっきり仕事に取り組めるような環境設計をすべきであるとコンサルティングの現場でも説いてきました。そして、分かりやすくするためにも”社内経済特区”を作るべきであると。詳細は、弊社のサイトの「新規事業 成功の法則」にも記述していますので、ご興味のある方はご一読ください。

内田洋行ではイノベーションの大切さを説き、どんどんと新規事業開発によるイノベーションを継続して連発していきたいとのことですが、私も同社の動きをウォッチしていきたいと思います。企画も大切だし、ビジネスモデルも大事。でももっと大事なことは、どれだけ新規事業への取り組みを重視しているのか、環境設計やルール作成で表現することも大事なのです。是非、同社の取り組みもウォッチしながら、自社を振り返ってみましょう。

投稿者 compas : 17:54 | コメント (0) | トラックバック

2008年08月15日

新規事業は”ワイガヤ主義”から

新規事業のコンサルティングでクライアント企業を訪問して感じることのベスト3に入ること。それは、一言で言えば、どんよりした空気がながれているということ。これは、プロジェクトメンバーの表情がさえないという意味ではありません。何か、空気が変なのです。私は新規事業の企画など特に”気づき”や”創造力”など頭ではなく、心も使う仕事の場合に、その環境をとっても意識します。

しかし、その環境を無視して眉間にシワを寄せて会議をしてしまう会社がとっても多いのは残念です。一番いいのは、たくさん外の明かりを入れて、適度にBGMも入れて、少量のお菓子や飲料も胃袋に入れてリラックスして、遊び心を大事にしたブレストを行うこと。そして、いつもは参加しないメンバーを参加させ、どんどんと”ワイワイガヤガヤ”言いながら会議をすること。ここに秘訣があるように思います。

静寂や眉間のシワというのは、新規事業の企画会議において一番ダメな環境を作り出しているとも言えます。良質な企画を生み出したり、事業開発に成功している企業では、意図的にか自然なのかは別にしてもワイワイガヤガヤ(ワイガヤ主義)の雰囲気が、功を奏しているように見えます。物理的に部署間の壁を取り払うだけではなく、実際に部署横断的に様々な人が機会を作っては議論することで、異種配合が行われ、新規事業の成功につながっているとも言えるのです。

例えば、先日日経産業新聞には三菱鉛筆社の事例が載っていました。同社は少子化の影響で、縮小する文具市場をどう打破するか。そして文具以外の新規事業をいかに立ち上げるのかという課題がありました。そこで、横浜にある研究開発センターでは、普段商品ごとに分かれている10のグループが部署間を仕切る壁を取り払い、アイデア会を始めているといいます。これは16年も前からですが。。

ここでは、各グループが企画したアイデアの発表から試作品の持込まで、自分のテーマ以外も扱います。そしてこのアイデア会からは、筆圧を利用し、芯を回転させて常に先端を尖らせるシャープペン「クルトガ」などのヒット商品も実際に誕生しています。さらに、ポイントは研究所に留まらずに、本社の商品開発部の人間も頻繁に研究所を訪れ、顧客の要望をフィードバックしたり、新規事業のヒントを情報交換しているそうです。

研究所内ではハード面でも人間面でも壁を取り払い、更に本社の商品開発部と研究所同士でも密に情報交換を行って新規事業の企画のキッカケとする動き。こんな部署横断的で異種配合の取り組みは、明日の新規事業のヒットや良質な事業開発につながっていくのではないでしょうか。社長からは筆記具の技術を用いて次の新規事業のネタを探せと号令が出ているようですが、今後の同社の動きにも注目です。

一人でも多くの人に所属関係なく会って話すこと。とにかく、これを継続するだけでも多くの企画が生み出す下地になりえます。事業企画も大事ですが、特に新規事業開発においては、その企画を生み出す環境、特にワイガヤ主義を作り出すことも大事ではないかと私は考えています。

投稿者 compas : 17:43 | コメント (0) | トラックバック

2008年07月12日

グループ会社に一本串を通せ!

このブログの読者の中には、グループ会社を複数持つ大手企業にお勤めの方も多いことでしょう。また、私たちのところには多くの大手企業から新規事業に関するご相談を頂きます。さて、この大手企業というのは、一つ難しい部分があります。それは新規事業においても、組織が縦割りなために、事業の立上げに苦労をしたり、企画の段階から協力が得られないことなどです。

例えば、ある企業様からは、今まで消費者向けの事業を手がけてきたが今度新しく法人向けの事業を行うので、そこを手伝って欲しいと。しかもその部分はノウハウがないと言うわけです。しかし、世間一般のイメージからいってもその会社は、既に法人向けの事業展開をしているはずでしたので、なぜノウハウがないと言われるのか分からなかったのです。

しかし、後で聞いてみてよく分かりました。法人向けの事業を手がける事業部は、うちの部署とは連携がないので、独自で立ち上げなければいけないと言うのです。これはまさに、縦割りの弊害ですよね。ここで大切なのは、事業部間やグループ会社間で横串を通すという組織上の問題と、横串を通すことで新たな付加価値を生み出すということの両面です。

それではここで、グループ間に横串を通すことで新規事業につながる事例を見てみましょう。先日、日経MJ紙でも取り上げられていた近鉄の沿線住民向けのサービスです。ポイントはグループで事業価値の向上を目指すところ。単純に言えば、その仕組みは、グループ間のサービスを一つの電話番号で、連携しながら沿線の住民にもご案内できる受付センターを設置するというもの。

電鉄の時刻問い合わせから、リフォームや近商ストアなどの会員制宅配にまで取次ぎ、更に外部企業とも連携し、提案できるサービスメニューを増やしています。例えば三菱UFJ信託銀行の資産運用や相続の相談、家事代行のベアーズとの提携など、沿線住民向けに総合コンシェルジュサービスを手がけようという流れのようですね。

一見すると、何でもないこの記事。でも私は見逃しませんでした。単純にグループ間の総合代表受付を設置したようですが、これは新規事業開発においても活用できるなと。つまり、グループ間をまたぐ横断的なチームを作って新規事業の企画などを検討すれば、初めから強みを活かした事業が企画でき、事業立上げ後も、グループのシナジーを働かせられるわけです。

新規事業の立上げとは、他人や他の関連部署を巻き込んでいくところに要諦があると私は考えています。それから言えば、グループで横串を通すチームを立上げ、グループの価値を向上させる新規事業を立ち上げることも、一つのアプローチとして有効なのではないでしょうか?

投稿者 compas : 14:50 | コメント (0) | トラックバック

2008年05月26日

アイデアは複数のルートから

最新号の日経ビジネスには全日空(ANA)が複数のルートからアイデアを吸い上げて、CS向上や新しいサービス企画に役立てているというレポートがありました。なるほど!と思うと同時に、私がコンサルティング現場で日々感じることと重なる部分があると思いながら読んでいました。ANAは、年間30回も社長や役員と直接対話する場が設けられているそうですね。

また、その他にも新規事業などの提案制度、そして企画だけを担うANA総合研究所という子会社を設立したりと、あらゆるルートを作ってアイデアを社員から吸い上げるようにしています。私が見る多くの企業では、とりあえず社内提案制度を作ったので、公募をして欲しいとだけ願う事務局スタッフ。そして、何でもいいからアイデアを考えて出してみろと口だけで言いっぱなしの経営者。こんな風景が繰り広げられています。

しかし、レポートを読む限りではANAほど徹底した企業はまだ珍しいと思います。何か一つの手段を用いて新規事業を提案させようとしても、会社の本気度を社員がくみとってくれるわけではありません。徹底的に、そして貪欲に提案できる場の設置と、そのための促しを行わなければ簡単には社員は手を挙げてくれないものなのです。ちなみに、ANAでは、20代の女性社員から提案された安全教育センターの設立などが既に実現済み。

そして、中にはANA銀行を作りたい、機内モニターで現地を案内する電子スチューワデスはどうかなどのアイデアが続出しているといいます。また、アイデアは出させっぱなしにせずに、優秀なアイデアにはアカデミー賞の受賞さながらに、赤絨毯を敷き詰めたところで表彰式を行うなど、モチベーションアップにも余念がありません。同社はアジアナンバーワンを目指すといい、そのベンチマーク先をシンガポール航空に設定しています。明確な目標ですね。

そのためには、現場にいる社員の力、意見が大事何ですという姿勢を、トップ自らが打ち出している。その一つの有力手段が、社員のアイデアを吸い上げる複数ルートの設置ということです。多くの会社では、社員がいつか提案してくれるだろうと甘い期待を抱きすぎ!また提案制度をつくれば、提案してくれるだろうと制度に頼りすぎ!まずは、複数のアイデア吸い上げルートをつくるところから始めるのがよいのではないかと私は思います。

投稿者 compas : 10:48 | コメント (0) | トラックバック

2008年03月05日

成功の秘訣は組織運営にあり!

新規事業開発において事業計画以上に大切なもの、それは大前提となる組織運営にあります。組織運営が正しくなされていなければ良い企画も宝の持ち腐れになってしまいます。そこで、今回は組織運営面から新規事業の成功の秘訣を探ってみたいと思います。

1.新規事業を聖域扱いに!

多くの企業は新規事業の扱いを、他の事業部と同じ扱いにしてしまう場合が多くあります。例えば、新規事業の業務も他の事業部の事業と同じような扱いで評価してしまう場合。実績や人事評価も他の事業部と同じような査定基準で見てしまう場合などです。しかし、ここで間違ってはならないのは、新規事業は他の事業とはまったく別の業務であることを経営者は理解しなければなりません。なぜなら、未知なる新しい取り組みは、その業務のスピードも、業務の内容もまったく既存事業とは異なるからです。

ゼロから企画を作って、事業計画を作成し、経営資源を調達して、実行していく。しかも壁にぶつかってばかり。こんな難しい業務に他の事業部や既存事業の基準は何も通じないわけです。したがって、私は新規事業を担当しているメンバーにだけは、聖域扱いして「社内経済特区」を設けるべきだと日々説いています。

2.社内経済特区は、トップの姿勢から

前述したように新規事業は社内でも聖域扱いされるべきですが、問題は聖域に対して社内で不公平感が生まれてしまうリスクがあることです。実は、経営者はこれを一番恐れてしまいます。しかし、新規事業は将来の本業を作ることに他なりませんので、他の社員にどう思われようと、意地でも推進し、新規事業を担当している社員を守らなければなりません。言い換えれば、経営者が新規事業担当者を最後まで守りきれるかどうかが、成功の鍵を握るとも言えるのです。
 
3.片手間か?本気か?

新規事業支援に携わっていると、経営者が本気でやる気があるのかどうか疑わしいと思うことがよくあります。実は、突き詰めて考えていくと、経営者の多くの本心は、「新規事業がうまくいけばいいなぁ〜・・・」、「社員が良い企画を出してくれたら嬉しいなぁ〜・・・」などと、どこか他人事のような気持ちを持っていることが多いのです。または、願望ばかりで本気で成功を考えてないというケースもよく見受けます。

つまり、「新規事業が必要なことは分かるけど、本気で取り組むのが怖いので、少し号令はかけるけど、様子を見てみよう」という考えのようです。これでは、成功などするはずがありませんよね。片手間や受身ではいけません。組織運営の以前の問題ですが、これはよく見る光景であることも困りものです。新規事業のプライオリティを上げて、是非全力で取り組んで頂きたいものです。

4.缶詰研修で本気創出と優良な企画創出を!

さて、最後になりますが、私は本気で新規事業に取り組み、優良な企画を創出するには、缶詰研修が一番いいと思います。研修中に、必要なスキルを習得しながら、企画の目標設定を行って、社員には期間中に必ず企画を提出してもらう。そして、そこには必ず経営者や事業部長クラスも参加する。

こうすることで、社員は経営者の本気度を感じ、更にスキルアップと企画創出の一石二鳥が図れるわけです。缶詰研修は、実は効果的な組織運営をするためのトリガーにもなりえますので、一度導入してみることをお勧めします。新規事業開発における組織運営の秘訣は、社内経済特区と経営者の本気度にあることを覚えておきましょう!

投稿者 compas : 10:11

2007年10月11日

明確に決めるべきを決める!

社内ベンチャー制度が活性化しないという声を、大企業を中心によくお聞きします。殆どが、「良い企画が社員から挙がって来ない」、「そもそも企画が挙がって来ない」、「良い企画であってもそれをグランディングさせるスキルがない」というもの。でも私は、この種の問題解決は簡単であると考えています。なぜなら、ボトルネックは、制度の意味、目的、方向性、進め方、本気度、基準、事務局の役割と位置づけなど、”明確にすべきものが明確になってない”ことが殆どだからです。

つまり、明確に決めるべきものを先に決めておけば、大抵の課題はクリアになるとさえ思うのです。それを他社に倣ってというレベルに止まっていたり、制度を導入すれば良いアイデアが社員から出てくるだろうという淡い期待を抱いているから、スムーズにいかないのです。さて、私は社内ベンチャーの制度がしっかりしていて、なおかつ効果的に新規事業を生み出している企業に「サイバーエージェント」社の例をよく挙げます。

私が直接関与しているわけではありませんので、もちろん実態はどうかなど不明な点も多々あります。しかしながら、同社のIR情報をチェックしている限りは、上手に運営していると思える企業の一社だと感じます。同社は、この制度を「ジギョつく」という名称で行っており、かなりシステマチックに運営されています。詳細を、「分かりやすく整理している文章」がありますので、ご興味のある方は、覗いて見て下さい。

社内ベンチャーの公募から立上げまでは、それ程目新しいプロセスではありません。しかしながら、トップの「本気度とコミットメント」、またブラッシュアップ用の「教育」、そして制度や各種「基準の明確さ」の3つをクリアにしていることで、社内においても意義のある制度になっていると思います。また少なくとも、私はこの3つが社内ベンチャー成功の秘訣だとも考えています。スムーズに社内ベンチャーの運営ができないと嘆かれる企業は、私が提唱する3つのポイントと同社の事例なども参考にしてみてはいかがでしょうか。一度、詳細な記事をリンクよりお読み下さい。

001_0002.jpg

投稿者 compas : 21:15 | コメント (0) | トラックバック

毎月3つのアイデアを義務付け

今日は新規事業というよりは、新製品開発についてのお話をしてみましょう。一見すると、新規事業開発と、新製品開発は同じようで多少ニュアンスが異なります。しかしながら、新しいものにチャレンジして、新しいマーケットを創出していくという意味では同じです。さて、新製品開発でユニークな企業を挙げるとすれば、皆さんはどの会社を挙げますか?私は、個性的な「小林製薬」を挙げます。小林製薬といえば、”さわやかサワデー”や”アンメルツよこよこ”など、一目で分かるか、イメージできるネーミングで日用品業界では多くのヒット商品を持つ企業です。

さて、この会社の多様なアイデアはどのように出てくるのでしょうか?個性的な社員が多いのでしょうか?その答えは、アイデア会議にあります。つまり、会社の仕組みとして、またトップ・プライオリティとして経営の中でも高い優先順位で製品開発の源となる、この会議を重視しているのです。ちなみに、この会議、毎月1回、2日にわたって開かれるそうで、1件につき30分をかけて開発の可否を即決するそうです。もちろん、社長自らが出席して、厳しい質問を投げかけるわけです。

ここで、討議されるアイデアの数は、果たしてどれくらいなのでしょうか?なんと、年間で15000件以上のアイデアが出され、そのうち200件以上が会議に挙げられてくるそうです。私は、乱暴に言えば”数打てば当たる”という表現になってしまいますが、「アイデアの質は、アイデアの数からしか生まれない」と考えています。なぜなら、初めから天才的なアイデアなどが出てくるわけがないからです。しかし、大量にアイデアが出され、ストックされていくことで、経験知が高まり、質の向上にもつながっていくというわけです。そう意味では、小林製薬はすごいですね。

さて、その小林製薬は、かつて会社が大きくなって一流企業になったという甘えやマンネリを感じて、この会議を始めたといいますが、その際に、組織的な仕組みをつくったことが、一番のターニングポイントになったと思います。それは、医薬品や芳香消臭剤など6つの完全な縦割り組織をつくり、各部門に毎月3つのアイデア提出を義務付けたことに、アイデア会議の源流は遡るようです。会社が、ここまでノルマを課して、社長自ら経営の優先順位を挙げて、製品開発に取り組めば、さすがに社員も会社の本気度を感じますよね。

ノルマや義務付けというと、すぐにアレルギーを起こす会社も、多くあります。しかし、仕組みを定着させるまでは、社員を鼓舞するというメンタル面だけではなく、ノルマや義務付けを課すことも大事なのではないかと私は思います。皆さんの会社でも、新規事業のアイデアに対するノルマや義務付けを行った場合に、どういう効果が表れると思いますか?または、そういう取り組みをされていますか?仕組みとしてアイデアを創出していく。実は、これが会社にとっての新規事業の勝ちパターンにつながるエッセンスではないかと思います。

投稿者 compas : 20:56 | コメント (0) | トラックバック

カーブアウトという選択肢

皆さんは、「カーブアウト」という概念をご存知でしょうか?マニアックに解釈したい方は、「日本政策投資銀行のレポート」をお読みください。簡単に言えば、事業の”切り出し”のことです。大企業が社内に眠る有望な技術や事業シーズを社外に切り出して、ファンドなどの支援を受け、事業化する方法のことです。これは何らかの事情で事業化できない新規事業や技術のネタもせっかくだから、外部に出してしまって花を開かせようというものです。

でなければ、事業になる可能性があるにも関わらず、そのシーズ(種)を社内に眠らせていてはもったいないですよね。例えばソニーから飛び出て薄型ディスプレーを手がける「エフ・イー・テクノロジーズ」などのベンチャー企業の誕生例が有名です。コレは、あくまでも切捨てではなく、切り出しなのです。社外に出してしまうことで、親会社では出来ない業界横断的な提携戦略などが出来るだけではなく、第三者のファンドや金融機関、コンサルタントなどからの客観的評価が受けれますので、甘えやしがらみを全て断ち切れるわけです。

一方、独立する人にとっても、親会社とは資本関係や経営に関する提携関係は維持できますから、リスクは低減できるわけです。社内ベンチャーの場合には、親会社の事業とは関係がない事業も結構多いですが、カーブアウトの場合は、元々親会社の中にある技術やシーズを使いますので、ある意味では”のれん分け”という言い方もできることでしょう。さて、元々は大企業内に眠る技術がベースの、このカーブアウトという制度も、私は自身が専門分野のサービス業でも適用できるのではないかと思うのです。サービスは目に見えにくいという特徴がありますが、客観的な評価さえされれば、カーブアウトのスキームは構築できると思います。

社内から事業を切り出したい企業や、会社としてではなく、一事業部として新規事業開発で新たな分野に進出したい企業とが提携したい場合など、今後はサービス業でも取り組みを試みていく企業が増えて欲しいものです。新規事業には、経営戦略に合致したものは社内で事業化する本業パターンと、会社の協力を得て独立する社内ベンチャーやカーブアウト、そして会社を完全に辞めて資本関係もなくした状態で始めるスピンアウトなど、多種多様な手法があります。

そのため、大企業も、またこれから新しい分野に進出していく中堅・ベンチャー企業も、このような社内新規事業の取り組み方を洞察し、ハイリスクなものからローリスクなものまで、戦略のバリエーションを考えながら新規事業に取り組んでいって欲しいと思います。

投稿者 compas : 20:25 | コメント (0) | トラックバック

自由な立場が大切

企業内で新規事業開発を行う際に、新規事業開発部や社内ベンチャーチームのような、それに類する組織をつくることが多い。しかし、このような組織体でなくとも、事業開発に機能的な人材の配置や活用法はあるのものです。新規事業開発部といっても、組織にした瞬間から意外にも縦割り組織の文化に毒されてしまうことが多いものです。部署横断的な機能を持っても、風土的に機能しない場合もよく見受けられます。それなら一層のこと、どの組織にも属さず、そして組織化も行わない形で事業開発のプロを社内で育てることはできないだろうかと考えていくことが、きっと自然なことなのでしょう。

日本能率協会の村橋氏は、社員の身分のままで事業部に所属せず、自由にプロジェクトを提案し遂行する人材を「社内プロジェクティスタ」と名づけ、その人材の位置づけを提唱しています。新入社員の意識調査でも、どうせいずれは転職または辞める可能性があるという意識を持つ人が殆どなのです。それならば、一層のこと自由な立場で事業を提案し、推進できる立場のポジションを作ってあげればいいのではないでしょうか。向上心と自立心が無い人間には厳しいポジションですが、そうでない場合、擬似独立体験を積むことになり、本人のキャリアにとってもプラスに働く可能性が出て来ます。

ただし、このポジションのポイントは、社員を辞めさせないための手段でも、モチベーションを上げるための手段でもありません。あくまでも、自由な立場で事業開発をしやすくするという点にあります。例えば経営者という立場からは社員に自由な時間と裁量を与えるのは、怖くて仕方がないようです。もちろん、人選は必要ですけどね。しかしながら、自由な立場から自由に考えさせ、動いてもらう。こんな度量がある企業ほど、よい企画や新規事業の開発に成功するようです。会議室からは良い企画が生まれないのと同様、従来の組織体系からは成功する新規事業は生まれないのです。

新規事業とは異なりますが、韓国のサムソンは、海外で新しい市場を開拓する際に、まずビジネスに取り組まなくてもいいので、一年間その国に駐在して、やることは自分で考えろという形式をとります。これにより現地の文化を芯から理解し、ビジネスへとつなげていくことが可能になるわけです。特にインド市場では、そのようなところからスタートしたと聞いています。これは新規事業開発についても同様です。従来の組織体系に捉われないポジションを作り、自由な立場から自由に提案させ、自由に取り組ませる。こんな考え方も、選択肢の一つではないでしょうか?

投稿者 compas : 20:04 | コメント (0) | トラックバック

見切り発車する社内ベンチャー制度

大企業や中堅企業を問わず、社内ベンチャー制度を導入する企業が増えてきています。また、私のところにも社内ベンチャー制度の作り方や活性化方法についてのご相談が増えています。しかし、多くの企業ではパフォーマンス的でトップの本気度が伝わらなかったり、うまく制度が整備されてないなど根本的な問題を抱えている場合が多いようです。辛めに表現すれば、将来の収益のタネをまくために、”とりあえず”社内ベンチャー制度をつくろうという見切り発車的なケースが後を絶ちません。それでは、何が問題なのかを検証していきましょう。

一つ目は、制度の意味や会社としての位置づけが不明確で、社員になかなか浸透しないということです。新規事業が大事なのは分かるけど・・・これが社員の本音なのですが、経営陣は気付かないことも多くあるようです。そのため、新規事業の企画を公募しても、なかなか集まらないということがよくあります。なぜ、今この制度を導入して、アウトプットのイメージはどうあるべきかという理想像も明確にしなければなりません。松下電器は中村社長の時代に、総額200億円のファンドを用意して、社内ベンチャー制度を定着させましたが、ここまでやれば、トップの本気度が伝わりやすくなります。もちろん、会社の規模によって、この予算の額は大小があっていいと思いますが。

二つ目は、事業アイデアがあまり集まらないという点です。アイデアを複数出るようにするには、まず冷静に現在の会社の社風を見極めるべきです。つまり、社員の新規事業に対する意識の温度というものです。ところが、大企業にありがちですが、これだけの社員数がいれば、企画がいくつか出てくるであろうと。かつて私が相談を受けた某関西の大手私鉄会社は、社員数は多いのでと言っておきながら、応募で挙がってきた企画数は年間で2件のみ。それでも、実績と建前を重視して、無理にどちらかを採択して、予算をつけてしまったと言います。本当に、何をか言わんやです。

そして、最後の三つ目は、応募されてきた新規事業の企画や事業計画書を、どんな基準で評価するのかという点です。つまり、評価基準が明確でないことがあります。ここには社内の政治力学が根付いている場合も多くあります。また、事業計画書を評価する基準が明確な場合でも、評価する人間が、幹部も含めて、事業開発の経験や経営に関する意思決定の経験が不足しているということすらよくあります。したがって、そもそも事業計画を評価する明確な指標がないばかりか、評価できる人材も集めていないという問題を抱えている場合が多くあります。

制度さえ導入すれば、何らかのアウトプットが出てくるだろう。こんな思い違いが甚だしいトップのいる企業で事業開発をされる方がいらっしゃれば、さっさと起業してください。そのほうが、よほど社会のためにもなります。モノを作っただけでは売れないのと同様、制度だけでは何の意味も持たないのです。そのため、大企業だけではなく中堅・ベンチャー企業に至るまで、周到な準備と本気の取り組みで社内ベンチャーを始めていただきたいものだと思います。とりあえず、社員に手を挙げてもらうという、その”とりあえず”精神をまずは排除しましょう。名だたる大企業でさえ、こんなことをしている企業が多く存在することは本当に残念なことです。

投稿者 compas : 19:16 | コメント (0) | トラックバック

新規事業は、「緊急度が低いが重要な仕事」である。

社内ベンチャー制度を導入する企業が大企業だけではなく、中堅企業などにも広がってきました。簡単に言うと、新規事業の企画を部署を問わず、幅広く公募するという制度。そして多くは、新しい部署を立ち上げるというもので、子会社の設立や起案者の出資を必ずしも前提としていないところにも特徴があります。新規事業を自ら提案させ、提案した新規事業の立ち上げを起案者にさせるという点では、リクルートの社内制度が今までは有名でした。また、実際に社内での新規事業の立ち上げ経験者数は、即リクルート卒業生として活躍する起業家の数にもつながってきたわけですから、まさに機能している制度と言うことが出来るでしょう。しかし、私はもう一社注目している会社があります。それは、富士ゼロックスで、「バーチャルハリウッド」という制度です。ご興味のある方は、リンクからホームページに飛んで参考にして欲しいと思います。

これは富士ゼロックスの社員が所属する部署や肩書きに関係なく、やりたい仕事を自ら企画するもので、年間プログラムとして取り組み、予算が必要になれば役員クラスの賛同者を探して、スポンサー役になってもらうことができる仕組みです。中心となって進めるメンバーをディレクターと称し、1999年の開始以来、2006年度までの実績で、延べ661人が参加し、各テーマに賛同する協力メンバーは、2150人にもなるそうです。これだけ積極的に社員が動き出すという社風こそが、この制度を活性化させている同社の強みだと思いますが、それにしてもこれをトップ自らが本気で制度を根付かせる意識をもっているところが、重要だと思います。

私も、新規事業のコンサルタントとして、各社から社内ベンチャー制度の活性化支援を依頼されることが、今まででも数件ありました。大抵、ご相談に来る会社は、お題目だけ「社内ベンチャー」と言いながらも、トップは口だけで本気度を感じさせず、制度だけ作って終わりという状態になってしまっています。そのため、当然ながら公募にかけても、新規事業の企画を提出してくる社員など皆無の状態なのです。つまり、制度も大事ですが、まずはトップがコミットすることが、最重要になってくるという部分を理解するべきでしょう。

さて、このバーチャルハリウッド制度の効果はどういうところにあるのか。私は、新規事業の企画の数が増えるという部分ではないと思っています。この制度を実際に遂行していくに当たり、手を挙げた社員は、まわりのスタッフから部署横断的に協力を募り、更に経営幹部のコミットももらう必要があります。つまり、横と縦のつながりを嫌でも作らなければ、新規事業が推進していけないわけです。ここに自分の所属部署や肩書きなどもちろん関係ありません。こういう制度を導入することで、自然と社内の知恵やスキルの交流が図られ、触媒機能を持った新規事業の起案者が、縦横無尽に動き回ることで、組織の活性化が行われるわけです。するとどうなるか。当初はトップ主導で、新規事業の推進を旗振っていたわけですが、自発的に制度に関係なく、新規事業の種を見つけそれを育てる行動が社員間で図られるようになります。したがって、バーチャルハリウッド制度の導入は、組織・社風改革にまでつながるということなのです。

新規事業とは、「緊急度は低い」と位置づけをされている会社が殆どです。特に営業を強化して目先の売上げをいかに確保するかというところに重点が置かれるからです。しかし、緊急度は低いが、「重要度は高い」というのも新規事業の特徴でもあります。決して、おざなりには出来ないわけです。そのため、会社としては、新規事業がいかに「緊急度が低くても重要度は高い」かということを社内に浸透させる必要があります。ところが、緊急度が低い仕事は、誰しも後回しにしたくなるものですし、ましてや新規事業の場合、通常の組織では手がけにくいため、腰が引けている場合がよくあるものです。そのため、それを解消するためには、新規事業というものは、「緊急度は低いが重要な仕事である」ということと、「通常の組織では着手しにくいが縦横無尽にすべき仕事」ということを、社内制度の設計と浸透によってもトップが本気で位置づけるべきではないかと私は思うのです。

”異種交配”を制度の設計によって、促す。そして、その本質は、新規事業は「緊急度が低くても重要な仕事である」ということを発信し続ける。社内ベンチャー制度や社内の新規事業における組織運営体制が上手な会社ほど、この部分は徹底されているようです。

投稿者 compas : 18:44 | コメント (0) | トラックバック

事業企画の内容より人材第一!

事業は人材が第一というのは誰しもが知っているセオリーの一つです。特に新規事業開発というプロジェクトにおいては、それが命と言っても過言ではありません。しかし、それを”徹底できている”会社は意外に少ないものです。特に私がコンサルティングの対象としている中堅・ベンチャー企業では、「うちには人材が少ないのですよ〜」という嘆きの声と共に、あきらめ感がある場合が多いもの。しかし、そうとは言い切れないのがコンサルティングをしていていつも思うことです。なぜなら、中堅・ベンチャー企業の場合、人材がいないのではなく、配置する人材がいない、もっと言えば、”新規事業には配置したくない”というのが経営陣の本音だからです。

中堅・ベンチャー企業では、当然ですが企業成長のために、通常であれば「営業命」。つまり、営業を強化して目先の利益をいかに確保するかという点に経営のプライオリティが置かれていることが殆どです。特にサービス業など研究開発型のモノありきで勝負する企業を除いてはそうではないでしょうか。これにより、営業をはじめ、精鋭部隊は新規事業開発のプロジェクトに投入されることがないため、当然失敗に至ってしまうわけです。新規事業開発は人材が全てとは頭では理解していながらも、目先の売上げ確保以外には思い切った人材投入と資本投下ができていないわけです。これでは、新規事業も成功するわけがありません。

私の結論を言えば、最優秀の精鋭部隊で事業開発のチームを結成すべきだと思います。そんなことしたら、営業力が弱まるよ〜と思われる社長さんや幹部の方がいらっしゃれば、反省してください。そういう仕組み作りしかできてない経営手法にそもそもの問題があるからです。しかし、中堅・ベンチャー企業とは足腰が弱い状態。そのため、常に一人のトップセールスマンに頼るのではなく、仕組みで営業をまわし、優秀な人間を”将来の本業”である新規事業開発にあたらせる。こんなマネジメントをしなければ、生き残っていけないというのが実情でしょう。

また、人材の配置においては、社内外のボーダーを設けないでください。社外から場合によっては、獲得することも必要です。それは事業企画に精通した業界のプロというわけでは必ずしもありません。事業立ち上げのプロという意味です。本当のプロは、新規事業の立ち上げを支援するコンサルタントのように、業界の専門スキルの有無を必ずしも問わないのです。虫の目のように細かく深く見る目と専門性も必要ではありますが、それだけでは十分ではありません。むしろ鳥の目を持ち、大局的な見地から事業の立ち上げを進めていくことが時には必要になります。

さて、問題はそれでも、人数的に人材がいない(従業員が10名以下の零細企業のように)、全く未経験の人材だけで困っているという場合もあります。コンサルティング先の私のクライアントやご相談元の企業様は殆ど同じコトを話されます。であれば、極論ですが、社長が事業開発にあたるべきだと私は思いますね。もちろん社長自身も事業開発に未経験という場合もあるでしょう。しかし会社の規模が小さい間は、そんなことも言っていられません。

社長が実務を全て行うという意味ではなく、スタッフに放ったらかしにして任せず、節目節目で時にはスタッフとは同じ目線でタッチしておきましょうという意味に他なりません。ありがちなのが、「お前に任せたから、頼むぞ!」の一言で、今度は粗探しだけをして、文句を言う始末。”任せる”のと”放ったらかし”では意味が違います。社長がコミットするというスタンスこそが大事なのです。

事業企画の内容をどうするか、事業計画をどう作るべきかという議論に傾きがちですが、本当の意味で人材を第一に考えるところが一番成否を分ける鍵ではないでしょうか。少なくとも私はそう思います。また、事業の立ち上げ前後に、人選したスタッフの動きが悪い、または特性がないと判断した場合、経営幹部の方は躊躇せずに、チームから外してください。それは能力がなかったというのではなく、自分の人選ミスをわびて、向いてなかっただけであることを話し合えば、感情的なしこりも緩和されるでしょう。

事業企画の内容よりも、新規事業は人材が第一というのは、人材配置だけではなく、配置後の処遇にも目を配らなければならないのです。ここで全ての成功確率も決まるようなものです。優秀な人材配置を新規事業開発にあてるのは当然という社内合意に仕向けること。これは、まず事業開発のリーダーおよび経営幹部が取り組まなければいけないことでもあります。

投稿者 compas : 18:30 | コメント (0) | トラックバック