2008年08月13日
新規事業の位置づけを明確にする
新規事業コンサルタントとして様々な会社へご訪問したり、ご相談を受けることがあります。そこで新規事業担当者の聞く内容の3分の2は同じ内容のもの。「会社から新規事業の立上げを命じられていますが、いまいち方向性が定まらないのです。既存の強みは使わずに、新たな領域で新たな仕組みで企画を考えろと言われるのですが、何をどうすればいいのやら・・・」。本当に、よく聞く新規事業担当者の悩みの一つです。
私は内心、またか・・・と思いながらも必死に処方箋を書こうとします。そもそも新規事業開発において、既存の強みを使わずに新たな領域で企画を考えろとは、”両手両足を縛った状態で深夜の海に飛び込め!”と言われているのと同じだと考えています。そのため、何をやるかの前に、会社における新規事業の位置づけや定義を明確にすべきではないかと説いています。もしくは、位置づけが不明確の場合は、良質な企画など出るわけがないという基本論を議論できるように、経営陣を巻き込むべきだと担当者には伝えます。
私が考える新規事業の基本は、「強みを活かし、事業領域を”拡張”させて新しい切り口の事業を展開すること」です。ついつい、新規事業というと、他社がやってない世の中では目新しいものを追いかけるというイメージで語られがちです。しかし、世界初や業界初などという目新しさを競うのが新規事業だとは思いません。そこに顧客視点も入ってませんからね。シンプルに言えば、将来の本業の種を蒔くことにあると思うのです。そうして考えると、新規事業の位置づけや定義を明確にして、無意味な経営の多角化に捉われないようにしたいものです。
他人の芝が青く見えるのは仕方がありませんが、常にそういう視点では、どんな業界に参入しても同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。さて、新規事業の目的はハッキリしているけど、位置づけや効果という意味では疑問符がたくさんつく、TBSの事例をここでご紹介したいと思います。偶然にも、最近お会いする方から私の事務所がある赤坂の話になると、TBSは不動産屋と一緒だからなぁという話をお聞きする機会が幾度となくありました。
同社は放送枠の広告収入が減少してきたり、楽天に株を握られるという逆風下にあって、放送外の新規事業による収入や利益を2〜3倍に増やす中期経営計画を立てています。赤坂サカスなどの商業施設の開発や、最近では、元ソニープラザを運営するプラザスタイルという会社の株を250億円で取得するなど確かに積極的にはなってきています。しかしながら、小売・流通のカテゴリーでTBSが本当に成功するのか、そして放送事業との相乗効果が期待できるのかなど新規事業に関しては懐疑的に見られている節があります。
新規事業といっても、既に基盤が出来ている会社や事業をM&Aによって取得することは、一見するとリスクは少ないでしょう。しかしながら、新規事業という点で見ると、本業や既存事業の強みと相乗効果を持つか、レバレッジを効かせられなければ、財閥のごとく多角化をしまくる単なる企業グループの結成にしかなりません。新規事業の位置づけを明確にすることは、どんな企画を行うかという前に、そしてそれ以上に、大切なことは言うまでもありません。まずは、目新しい企画を求める経営陣を説き伏せ、大前提となるものを明確にすることこそ大事なのではないでしょうか。新規事業開発の第一歩目はそこにあると思います。これは、私自身がコンサルティングの現場で強く感じていることでもあります。
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2008年06月17日
富士フィルムの挑戦はいかに?
富士フィルムと言えば、フィルム、デジカメ、画像関連機器のイメージが強い会社です。ところが、最近では化粧品や医薬品を手がけ、総合ヘルスケアカンパニーを目指すという方向性を明確に打ち出しています。果たして、この挑戦の行方はどうなるのでしょうか?異業種への挑戦を大胆に進める大企業として私は大変注目しています。
もちろん、異業種への進出と言っても独自技術の転用やM&Aも絡めているので、全くの未知の市場への進出というのと意味は異なるかと思います。しかしながら、市場の評価は厳しく株価がさえない状態が続いているようです。これまで富士フィルムと言えば、医療関連でも画像診断など診断が中心だったのですが、今後は予防や医療まで踏み込み、本格的な事業展開を目指しています。
そして医療関連事業を収益の柱にして、10年後に売上高を3倍にするという計画。ところが、投資家からは、既存事業との関連性や収益性が不安定な医薬品に対しては懐疑的な意見が多数のようです。私は、独自の技術や強みが充分に活かされるならば、目先の株価に左右されずに、大胆に挑戦することは良いことだと思います。
実は、富士フィルムの主力分野である写真フィルムの主成分は、コラーゲンやゼラチンであることを知る一般の方は少ないでしょう。また、それら医薬品開発に不可欠な化合物ライブラリーも20万種持つと言われています。こうして考えてみると、使える技術や強みが充分あるわけですから、未知なる市場や関連性のない分野への進出とは一概に言えません。
独自技術を水平展開的に、分野をまたいだ商品開発を行う企業としては、花王が上手な事例としてよく取り上げられます。同社では、保有する技術の使い道はないか?企画に使える技術はないか?など、技術軸と市場軸を横串で刺す形で新商品の開発にあたっています。独自の技術を持つ企業は技術ベースと市場ベースの両軸で物事を考えることが大切であると私は考えていますので、花王の事例はまさにピッタリですね。
新規事業や新商品の開発を行う際は、技術や強みを活かせる市場を狙うこと。そして使える技術は何か?保有する技術の使い道は何か?など技術と市場の軸で企画を作り上げていくこと。これらが成功のセオリーだと私は思います。富士フィルムはそういう意味では、無意味に未知なる市場に参入する訳ではありませんので、一定の勝率を収めるのではないでしょうか。ある意味、花王のように、独自技術をベースに上手に水平展開されていくことをウォッチしていきたいと思います。
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2008年05月20日
コツコツと
全く未知の市場に進出する新規事業は上手くいきません。これは一つのセオリーだと思います。しかし、私は以前より「情熱×人材」がそこに存在するなら、そのセオリーを無視して頂いてもいいですとクライアントには説いています。未知なる市場に参入する新規事業がこの世からなくなれば、あの「ヴァージングループ」も存在しなかったわけです。つまり、まずはセオリーどおりに新規事業を考え、時には未知なる市場に参入することも恐れる必要はないとも言えます。
ちなみに、私は昔、マッキンゼーというコンサルタント会社出身の人間に言われました。「キミねぇ、全く異なる市場の新規事業をやってうまくいった例なんかないよ。うまくいくはずがない!」と。何の豪語や!と思いながら、あほらしくなって返答はしませんでしたけど。それなら、ヴァージングループも三菱商事などの総合商社や、コングロマリットを否定するのですかと。それは大企業だから例外という言い訳は通用しませんよね。
そこで、一つ小さな、異業種参入の企業の事例をご紹介しましょう。カルチャースクールを運営していた会社が飲食店で成功する話です。「ブラスアンドカンパニー」という会社は、ずっと教育事業を中核にしてきました。ところが、5年ほど前に、同社の社長である坂入氏は、ふとニューヨークで訪れた韓国料理のスンドゥブ専門店に魅せられたのです。これは豆腐を使った家庭料理でまだ日本では知名度が低い状態でした。
そこで、日本では競合が少なく、豆腐や魚介類を使用するスンドゥブなら健康志向の高い日本で受け入れられるはずだと判断し、新規事業を決断したと言います。とはいうものの、同社は全くの門外漢。そこで、料理が得意な従業員らが集まりレシピを研究。韓国での食べ歩きなども重ねて独自のスープを開発したといいますから、その努力には頭が下がる思いです。本当に成せば成るですよね。そして2006年に完成した一号店は「東京純豆腐」。
セントラルキッチンの活用による効率化やメニューの多様化などを重ね、現在では月商が800〜900万円ほどの店も誕生。そして今夏からは千葉県内にFC1号店が開業予定だといいます。(日経産業新聞参考)さて、いかがでしょうか?よくある開店ストーリーかもしれませんね。しかし全くの門外漢である企業が、一人の気づきから発生した事業化への未知としては良い事例ではないでしょうか。
この事例から紐解けることは、何事もコツコツと努力していけば、未知なる市場かどうかは関係ない。時には知識やスキルを超越することだってありえるのです。全く知識やスキルがなくてもいい。ただコツコツと仕組みを作る姿勢を持つなら、未知なる市場も新規事業の対象にしたっていいじゃないか。私は少なくともそう思います。なんだか精神論みたいになってしまいましたが、これも大事なことであると思います。
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2007年10月11日
販路や用途の転用先を考える
新規事業を検討する際に、全くの異業種に進出するのは考えもの。これは、私がいつも口酸っぱくして言うことの一つです。もちろん、進出する分野の知見を持った人材が新規事業開発のスタッフにいる場合や、やりきる力が経営者にある場合は別です。しかし、セオリーから言って、”未知なる”異業種へは進出してはいけないのです。ただし、これも解釈次第ということだけは覚えておきましょう。先ほどは人材が揃っている場合と意志が強い場合は例外というお話をしました。私はここで、ノウハウや強みが活用できるならということも付け加えたいと思います。
例えば8月11日付けの日経MJ新聞の記事では、”接客ノウハウを新規事業に”というテーマで掲載されていました。実は、この事例は私もよく研修やコンサルティングの現場でお話するものです。それは、ホテルや民宿などが自社の強みである接客技術を活用して、異業種の新規事業に進出するというものです。
例えば、記事によると「ホテルオークラ東京」は、高級マンションに社員をコンシェルジュとして派遣する事業を拡大すると言います。また、「加賀屋」や「リッツカールトンホテル」など、サービスに定評のある宿泊施設の接客術を学ぶ講義を、研修旅行のプランに盛り込む旅行会社も増えているようです。
つまり、ホテルや旅館など高度な接客技術のある企業は、そのノウハウを活用して、異業種にて上手に転用しているわけです。よく、私が御社の強みは何ですか?と質問すると、ありません!という返事が返ってくることがあります。しかしながら、自社の業界内では強みと思えないようなことも、それを異業種に当てはめてみると、抜群に強みを発揮するということもよくあります。つまり、異業種で新規事業を検討する場合は、自社の強みを分析することはもちろんのこと、その販路や用途など転用先を考えることが重要になってくるわけです。
私は冒頭で、例外はあるものの、異業種で新規事業を行うことはセオリーから外れているので、止めたほうがいいと言いました。しかしながら、ノウハウや強みが充分に活かせる先を探すことが可能であれば、それを決して否定するものではありません。是非、異業種で自社の強みが転用できるところがないか、自社を振り返ってみましょう。意外なところで、新規事業のアイデアや企画などは見つかるものなのですよ。
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何に集中投資をするのか?
最新号の日経ビジネスの特集で掲載されていた「ブラザー工業」の事例はとても興味を持って読めました。それは、企業を買い漁る海外ファンドにも負けないブランドづくりという特集でしたが、私の着目点はブラザー工業の事業の変遷の歴史でした。「ブラザー工業と言えば、ミシン!」、こう連想する方は年齢がばれてしまいますね。もしくはブラザーの本質が見えていませんね。これは今となっては有名になりましたが、「ブラザーと言えばデジタル複合機器!」と連想して欲しいものです。
ブラザーは今でもミシンの世界シェアが25%ですが、既に売上の6〜7割はミシン以外で稼いでいる状態です。キャノンやエプソンと直接バッティングをしないSOHOや中小企業向けに、特に欧米に狙いを定めて参入した複合機器市場。今では米国で、小型のモノクロレーザー複合機でトップシェアを誇るまでに成長しているそうです。実は、私の事務所でもブラザーの複合機にはお世話になっていまして、なんと言っても価格の安さではダントツという印象です。そのため、中小やSOHO企業の間では独特のブランドを築いて来たわけですね。
さて、ブラザーといえば、ちょうど100周年ほどの歴史を迎えるそうですが、「安井ミシン紹介」という名前で兄弟で国産ミシンを開発して、兄弟を表す”BROTHER”をミシンに刻印したことに、そのブランドの歴史の原点があるようです。しかしながら、ミシンの普及とともに売上が減少し、代わりの収益源とした扇風機や洗濯機などの家電、宝石、家具などと多角化経営は迷走が始まるという苦境も経験されました。ここでミシンもダメ、その他もダメということで始めた事業が、社内に残った技術を活用して海外と事務機器に絞り込むことにあったのでした。
そして、今に通じる複合機の活路は、84年のロスオリンピックの報道陣に提供したタイプライターが好評を得たことにありました。それ以後、低価格のファックスなどを開発・販売して事業に大成功したのです。そして今では、通信カラオケや着メロなど通信を活用したコンテンツ事業にまで幅を広げています。また、将来は医療にもつながる、特殊な視覚技術の開発にまで、その展開は広がってきています。
さて、ではブラザーが一見すると、つながっているようでつながっていない異業種の新規事業を次々と成功させ、事業ドメインを広げ、ブランドを浸透させてきた要因はどこにあったのでしょうか。一言で言うと、売る商品が決まってなかったり、事業ドメインが未確定であっても、それぞれの事業の準備の段階で多大な、”技術研究・開発に対する投資”だけは落とさなかったことにあります。ただ、問題はその技術の活用においては、技術が事業ごとに分散してしまっていたため、実際の商品だけは売れていないという問題を抱えていただけなのです。
つまり、異業種の新規事業で成功させる場合にでも、会社として何に集中投資をしてきたのか、そしてその結果として社内にどのような技術やノウハウが残っているのかということが、後でとても鍵を握るようになるのです。従って、異業種でも新規事業を成功させるためには、会社として何に強みを置くのかを決め、そこにいかに大胆な集中投資ができるのかを決断することが大事だと思うのです。たまたま時流に乗ったからや、たまたま優秀な人材がいたからというのは、本質的には事業の成功とは言い切れません。あくまでも、会社としての集中投資の分野が、後の異業種の新規事業に活きてくるのです。
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本業強化ならどんどんやるべき
全くの異業種に挑む新規事業はセオリーから言って危ういとは私がいつも言うことです。しかしながら、本業の強化のためなら逆にどんどんやるべきだとも思うのです。これは前号でも記述した強みを活用して呼び水商法を行うものと同様のものです。例えば地場スーパーの「ダイシン百貨店」が、インターネットを活用した顧客の健康管理サービスに乗り出すと言う記事を先日、日経MJ紙で読みました。なんで、百貨店がネットで健康管理なのかなと思っていたら、やはりサービスの提供を通じて健康食品などの売り上げ増につなげることが狙いであると記事でも紹介されていました。
「サービスの概要」はというと、医療機関などで受けた健康診断の結果をもとに、ネット上で食事や運動のアドバイスをするというもの。サービス利用料は年間¥3600で、脈拍や血圧などの健康診断の履歴はネット上で保管出来、データを継続的に記録して病気の予防に役立てる仕組みになっています。また店舗内には専用サイトにつながる端末を設置するため、その場で健康診断が受けられるという部分も利点のようです。なるほど、サービスのモデル自身は以前よりありました。しかし、いずれも医療系もしくは健康サービス関連の企業が実施する場合が殆どでした。
これが、異業種企業が自社の本業強化のためにやるところまで広がってきたということなのでしょう。私は、何か目新しいものをすることが本来の新規事業の目的ではなく、あくまでも将来の本業をつくるか、既存の本業を強化するために行うことが目的であるべきだと考えている人間です。そのため、新規事業の経験が少ない企業は、未知の世界に無鉄砲に飛び出すのではなく、まずは本業の強化という位置づけで新規事業を手がけてみてはどうかと考えています。それであれば、異業種であっても、位置づけが明確ですから、問題はありません。
本業での事業展開をどのように行うのか。ここでマーケティングの枠にとらわれずに、異業種での新規事業開発で本業を強化したり、補完するという手法も是非考えて欲しいものです。上手くいけば、新規事業そのものが大きな収益を生み、自立するようにもなるのです。本業強化の異業種新規事業は、どんどんやるべきである。私は少なくともそう思います。
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老舗企業の異業種へのチャレンジ
伝統と歴史のある企業は、創業時と現在の事業内容が異なっているということがよくあります。時代の変化とともに変遷していかなければ生き残れないため、それは当然のことでしょう。しかし、これは例えば戦前、戦中、戦後や、バブル前、バブル後、更にはネット誕生前、ネット誕生後という大きな区分でしか時代を捉えきれずに、今の主力事業が気付けば成熟化し衰退に向かっていたということも、よく見かける光景です。
さて、これらの経営リスクを回避していくいためには、常に将来の本業となり得る新規事業開発を業績が好調な時に行っておかなければなりません。また、特に伝統と歴史のある会社は、時には異業種へ進出する大胆さも同時に兼ね備えておかなければならないのです。
もちろん、新規事業で異業種へ挑むといっても、原則としては自社の伝統と強みを踏まえた上での事業領域が望ましいのは言うまでもありません。機械を製造しているメーカーが、いきなり居酒屋のチェーン店を始めるというのはあまり現実的ではないでしょう。では、老舗企業であっても、どういう新規事業開発が、スムーズに異業種へと展開できるのかということを事例と共にご紹介したいと思います。
まず私が今注目している会社に「セーレン」という染色加工の会社があります。創業約120年で本社を福井県に置く今では一部上場企業です。ちなみに同社のことはタイムリーにも、今朝の日経MJのトップ記事に紹介されていました。同社は、現在、自動車向けの内装材が主力事業ですが、創業以来、染色加工から始まり絹の精錬業など総合繊維事業へと軸足を移してきました。
しかしながら、繊維事業もある意味成熟化した産業ですよね。そのため、強みを活用した新規事業を次々立ち上げなければ、生き残りが難しいという状況にありました。では、今は何を手がけているのか?ということですが、例えばアジア風プリント柄の「婦人衣料店」をSPA方式(製造小売一貫)で展開。もちろんネット通販も手がけておられます。ここには、コンピュータのデジタルデータを忠実に再現する独自の染色技術が使われた商品が用意され、仕上がったその独特なカラフル模様が人気のようです。現在は年商が10億円程度と全社の売上げに占める割合は1%程度ですが、今後の展開が楽しみなところでもあります。
また、今度は、SPA方式のアパレル事業でも、新業態を開発しました。衣料のサンプルだけをお店に置くものの、来客者は店頭のパソコンを触って、画面上から色や形を選択して購入するだけの形式とし、受注から1週間で顧客に配送すると言います。そして次の段階では、店舗展開もやめ、全てをネットだけで事業を展開していく構想のようです。つまり、時間をかけて段階的ではありますが、消費者と直結していかなければ、もはや繊維業界では生き残れないという判断をされているわけです。
今ある事業とは隣接した異業種の市場で、異業種のビジネスモデルを構築していくセーレン社。斜陽産業だと言われている繊維業界にあって、BtoBからBtoCへ、そして川上から川下へと垂直&水平展開をしかけていく姿。まさに、老舗企業の異業種のチャレンジという部分では、とっても勇気をくれる事例だと思いませんか?異業種と言えども、自社の強みを活かし、現在の本業と隣接する市場から参入していく方式。しかしながら、ビジネスモデルは既存の業界にはない異業種のモデルをどんどん取り入れていく方式。老舗企業が異業種へチャレンジしていくときの、スムーズな展開方法を、私はセーレン社の事例の中に発見したような気がします。
投稿者 compas : 19:21 | コメント (0) | トラックバック
参入の成否をどう考えるか?
新規事業の企画を社内で生み出す際に、自社の本業とは少し遠い、異業種の企画が挙がってくる場合があります。そこで、いつも私にされるご相談、「鈴木さん、異業種の分野での企画ですが、参入してもいいと思いますか?」というもの。本当に、この手のご相談をよく受けます。結論から言えば、No!です。しかしながら、条件付きでOKですよと言う場合があります。それは、セミナーでもお話するのですが、「時流×人材」の公式に当てはまる場合です。ここからは極論ですが、人材がいなくても時流に乗っていれば、とりあえず新規事業の”離陸”は果たすことができます。また、逆に、”時流”に乗っていなくても、優秀な人材が集まれば、事業の立ち上げもその後のマネジメントもスムーズにいくでしょう。ところが、このうち、どちらもないという場合には、もちろん失敗しますし、私も異業種への参入をストップさせます。
では、実際に異業種への事業参入で成功している新規事業の事例はどれほどあるのでしょうか?そして、どうして成功したのでしょうか?例えば小さい単位でビジネスを捉えるなら、脱サラして飲食業の経験がない人が居酒屋を開店させて成功している例があります。また、同じ飲食店でも、店をたたんで、インターネットの広告代理業を始めて、事業を大きくさせている場合もあります。前者は起業、後者は業態転換というものですね。また、これもよく事例に出しますが、「紳士服の青木」のように、紳士服とは異なるブライダルやインターネットカフェなどを手がけて、上場させるまで新規事業を発展させている例もあります。
しかし、大企業で資本や設備を持って、各専門企業と協力関係を築ける場合を除けば、中堅・ベンチャー企業にとっては、新規事業開発において異業種へのチャレンジは大変困難を伴う作業であることには変わりがありません。さて、それでも成功事例が数多くありますが、これらに共通するものは何でしょうか?それは”飾らずにさらけ出す”ということです。未経験の業界であれば、知人を頼りに専門家にインタビューに伺う、また時には飛び込みで専門企業に訪問する、学会の勉強会に出るなどで、知見や専門性を高めることが実は大きな鍵を握ります。そこで、必要なのが、知ったかぶりをせずに、また恥を恐れずにとことん調べつくし、とことん聞いて回ることだと思います。
その過程では、新規事業の立ち上げに必要な、人と人とのご縁が不思議と出来てくるものでもあります。本当に、不思議なくらいに、ジャストタイミングで人とのご縁は発生するものなんです。例えば、「ソシオン」という医療・介護分野に特化したマーケティング支援会社があります。で、ここの細川社長がとても興味深いのですが、細川社長は元々は旅行会社を経営しており、その後はネットベンチャーを更に創業、そしてまた転進して今度は医療関係へと。なんでもキッカケは、10年ほど前にがんで母親をなくしたことにあるようです。それからは、医療業界を志したものの未知の世界過ぎて、分からないことや疑問があればすぐに専門家に聞きまくったそうです。
全くの異業種であっても、「時流×人材」の公式にはまっていれば、それは参入検討の余地ありだと前述しました。しかし、その裏側では極めて泥臭く、人間くさい活動が待っているわけです。色々と躊躇される場合もあるでしょう。また、他人の芝が青く見えることもあるでしょう。でも、所詮、新規事業開発とは本業の周辺であっても、そうでなくても、泥臭い仕事なわけです。それをコンサルタントとして携わっている私は、もっと泥臭いですけどね。異業種への参入の成否。そこには絶対的なロジックはありません。極めて泥臭く、人間くさいプロセスを厭わない気持ちこそが最終的には大事になってきます。
